否定をしない
アケミ「6月はサクランボの季節ね。サクランボは桜からできるの?」
ピエロ男「いや、そうじゃなくて、ミザクラという果樹からできるんだ。」
アケミ「そのミザクラと桜のなにが違うの?桜からは同じような実ができないの?」
ピエロ男「違うな。まあ、桜からも実はできるよ。でも、サクランボくらいの大きさにはならないんだよ。」
アケミ「ふうん。なかなかの博学ね。わたしはサクランボでは佐藤錦が好き。」
ピエロ男「でも、佐藤錦はメジャー過ぎるし、高いだろ。」
アケミ「まあね。美味しいけれど確かに少し高いかも。あ、アメリカンチェリーはどう?安いし、あれはあれで美味しいわよね?」
ピエロ男「えー?アメリカンチェリーかよ。農薬が心配じゃね?」
アケミ「食べるときにしっかり洗えば、大丈夫なんじゃない?」
ピエロ男「しかし、アメリカンチェリーって大味だよなぁ。舌が繊細な俺にはなんか合わない感じがするぜ。」
アケミ「それはアンタがビングという品種しか知らないからよ。アメリカンチェリーの中にはレイニアという品種があって、それは日本のサクランボと似た味わいがあるのよ。」
ピエロ男「でも、アメリカンチェリーは農薬がなぁ。」
アケミ「さっき言ったけど、しっかりと洗い流せば良いでしょ?」
ピエロ男「そうだけどさぁ。」
アケミ「...。」
ピエロ男「あれ?なぜに沈黙?」
アケミ「アンタと話すと、『でも』とか『いや』とか否定ばっかりでイヤになるわ!」
ピエロ男「でも、お前の言うことが微妙に間違ってるから、しょうがないじゃん。否定するしかないっしょ。」
アケミ「否定されるってどういうことかわかる?否定されて自分が受け入れられなくなる。そうすると、自分の安心感が損なわれるの。」
ピエロ男「安心感が損なわれるのはイヤだわな。」
アケミ「そうでしょ?そうすると、自分の安心感を損なう人には話しかけたくなくなるの。」
ピエロ男「それはわかる。誰しも、自ら傷つきたいとは思わないもんな。」
アケミ「でしょ?結果的に否定ばっかする男はどうなるかわかる?」
ピエロ男「うーん。あ、誰からも話しかけてもらえなくなるってか。」
アケミ「心当たりはないの?」
ピエロ男「オレ、あんまり人から相談とか受けないかもしんない。人望がないからかと思ってたけど。」
アケミ「アンタの場合、人望がないのもあるけど、人の話にいちいち否定を入れてるのが大きいんじゃない?」
ピエロ男「そっか。」
アケミ「みんなから話しかけられるとうれしいでしょ?まずはその否定ばっかする話し方を変えてみたらどう。」