恩を売る
知らなきゃマズい?いちばん手っ取り早い成功の秘訣
アケミ「あら、あんた出かけるの?」
ピエロ男「ああ、手品のレッスン受けに行くよ」
アケミ「あんたにしちゃ、よく続くわね」
ピエロ男「ほんと一言多いな、お前は。まあ、手品の先生優しいし教えるの上手いんだよ。だからかな」
アケミ「いい先生なのね。なんかお礼とかしてるの?」
ピエロ男「お礼?毎月レッスン料払ってるんだから、そんなのいらねえだろ」
アケミ「だからあんたはダメなのよ。より多くを与えればより多くのものが与えられるのよ」
ピエロ男「説教くせえな。本当かよ」
アケミ「本当だってば。返報性の原理って言葉があるけど、知らないわよね?」
ピエロ男「もちろん、知らないぜ。どういう意味だか説明してみな」
アケミ「...バカ。返報性の原理ってのわね、モノを贈られた人は贈った人に何か返そうとしなきゃいけないと思う心理のことよ」
ピエロ男「つまり、モノをもらったら、いけねえ恩返ししなきゃなんねえと思っちまうってことか」
アケミ「そういうこと。あんたもそういうことあるでしょ」
ピエロ男「まあ、そりゃあ社会のマナーだもんな。返さなきゃマズいだろ。社会からつまはじきされるぜ」
アケミ「まさにそこなの。その社会的心理を応用したのが返報性の原理よ」
ピエロ男「へえ、そういうことか。つまりだ。手品の先生にも月謝以外にお菓子とかのお礼を贈っとけば、いいことあるかもしんねえってか?」
アケミ「ええ。アンタだけに秘密のマジックを教えてくれるかもしれないわよ」
ピエロ男「そいつはいいな。あ!いいこと思いついたぞ。オレがたとえば爺ちゃん婆ちゃんたちの施設、そう、老人ホームとかで無料のマジックショーを開催したら、なんかいいこと返ってくるかもしれないってことか?」
アケミ「金銭的な見返りはないかもしれないけど、お爺さんお婆さんたちのステキな笑顔が返ってくるかもしれないわね」
ピエロ男「なんだい、金にはならねえのか。でも、笑顔がもらえるのか。そういうのも悪くないかもしれないな」
アケミ「そうそう、いつも笑顔でいるっていうのも。一つの贈り物よ。笑顔でコミュニケーションする人には何か良いものが返ってくるわ」
ピエロ男「えっへん、オレはいつも笑顔だけどな」
アケミ「それはピエロのメイクでしょ。目は全然笑ってないじゃない」