すべてはユーザーのために
だれの心にも響かないものを作ってないか?
それじゃあ、うまくいかない。売れないし、受け入れられない。
ちょっと聞いてほしい話がある。
これは私の体験である。
独りよがりの失敗
10年ほど前、仲の良い介護施設様から、介護技術講習会の講師の依頼を受けたことがあった。
私は頑張った。事前にわかりやすいPowerPointを作成した。そして、講習会では、その技術の基礎的なところや手順などをゆっくり丁寧に説明した。
しかし、反応はイマイチだった。私の講義を真剣に聞き入る様子も見られない。終了後のアンケート結果も良くないものだった。
以後しばらく、その介護施設様から講習会の依頼をいただくことはなかった。
ただ、3年前にふたたび講師の依頼をいただいた。どうしてまた私を依頼したのか?それは、ほかの講師が多忙で行けないという事情が生じた。だから、どうしようもなく私に再度依頼をしたようなのである。
受け手のことを知る努力
反応がイマイチになるのは御免だ。だから、やり方を変えねばならない。
ところで、前回の失敗は何だったのか?それを見つめ直した。
PowerPoint資料もよかった。加えて、介護に必要な技術をわかりやすく説明した。それなのに、どうして受講者である施設の介護スタッフさん達は私の話を聞いてくれなかったのか?
一つわかったことがある。その講習会は夕方、夜勤以外のスタッフさん達にとっては仕事の終わった後に催されたのだ。つまり、大半のスタッフさんは疲れて聞く気を失っていたのだ。
もう一つある。わたしの講習はつまらなかった。わかりやすくはあるが、つまらないのだ。疲れて集中力を失っているスタッフさん達、彼らがつまらなく単調な講習を聞く気になるはずがない。
そこで策を講じた。まずは介護施設の施設長さんに相談し講習会のPowerPointに、そこのスタッフや入居者様を載せる許可を得た。そして、前もって施設内で取材をし、スタッフさんや入居者様の写真・動画をいっぱい撮って、現場の声も聞き、現場でなにが問題となっているかを知った。
じっさいの講習会ではPowerPoint上でたくさんの介護現場のスタッフさんや入居者様を登場させ、現場での問題点を多数紹介した。
前回と同じ条件、つまり、大半の講習会参加者が仕事後に疲れているスタッフさん達であるにも関わらず、今回はウケが非常に良かった。
成果と振り返り
前回と今回の違いは何だ?それを考えた。
答えは自分たち介護スタッフや、彼らが普段接している入居者様がスクリーン上に登場しているということだろう。
スクリーンに投影された写真や動画に自分たちの姿が映る。そうすると、やっぱり疲れていても見入ってしまう。当事者意識をもって、その説明を聞いてしまうものなのだ。
じっさいこの時の講習会の反応は上々で、講習会後に多数質問をいただいたし、(仕事後に疲れているスタッフさん達が熱心に質問してくれるのだ。すごく嬉しいことであった。)アンケート結果も良いものだった。
その後、毎年、その介護施設様から講習会の依頼をいただいている。
今年は年1回ではなく、2回やってくれと頼まれた。
このことから思い知らされたのは、
独りよがりはダメで、つねにお客様の立場に立って、
お客様の目線で、ものを作らないといけないな、ということだ。
あなたも、もし自分の作るものがいまいちウケていないな、と感じたら、
一度、受け手である相手の立場になってみたらどうだろうか。
そこに突破口が見つかるかもしれない。