イエスマンになれ!
ピエロ男「なぁ、うちの甥っ子が今度就職するんだけどよぉ。仕事が上手くいくコツを教えてくれって聞かれたんだ。なんかねぇか?」
アケミ「仕事が長続きせず転々と職を変えるアンタに聞くのかい?その子も仕事のセンスがないわね!」
ピエロ男「うるせぇ!だからオレだってお前に聞いているんじゃねぇか!」
アケミ「わかった、教えてあげる。上司の指示に『はい』と答えていればいいのよ。」
ピエロ男「それだけか?」
アケミ「それだけよ。」
ピエロ男「本当かよ?」
アケミ「アンタ、上司の言うことに全て『はい』と言ってた?」
ピエロ男「いや、言わねぇよ。なんか面倒くさいことは断ってたな。」
アケミ「だからダメなのよ。なんでも『はい』といって結果を出す。結果が出なくっても全力を尽くす。それが成功の秘訣よ。」
ピエロ男「『はい』『はい』言うヤツはどうなっていくんだ?」
アケミ「上司にとって仕事を頼みやすい人になるわよね。そういう人は可愛がられて当然でしょ。」
ピエロ男「あー、オレなんか誰からも何も頼まれねぇもんな。」
アケミ「だから今のアンタがあるのよ!」
ピエロ男「グサッ。今からでも遅くない。オレも素直に『はい』と言ってみるか。」
アケミ「『はい』を続けていくと、だんだん難しい仕事を依頼されるようになる。それにも『はい』と答えて、がんばって結果を出すと、どんどん会社での地位が上がっていくわ。」
ピエロ男「…ちょっと待った!それって経営者の論理じゃねぇのか?『はい』『はい』言うヤツが出世するって訓示を垂れて、てめぇに都合の良い兵隊を養成しようとしているだけだろうが。」
アケミ「たしかに経営者にとっても、イエスマンは好都合よ。でも、上司の期待に応えた部下も出世するのだからウィンウィンの関係じゃない?」
ピエロ男「いいや、騙されねぇぞ。そうやって社畜になって、過労死する人だって出てるじゃねぇかよ、この悪党が!やっぱ『はい』『はい』なんて安易に従うもんじゃねぇな!」
アケミ「まぁ、アンタの言うことも一理あるわね。ケースバイケースで考えるべきかもしれないわ。」
ピエロ男「相手や要求を見極めるってことか?」
アケミ「そう。『はい』の見返りが期待できないときとか、『はい』と引き受けることで自分をすり減らすだけならば、断ったり、降りたりしても良いのよ。完全に搾取されているだけと気づいたら、逃げた方がいいわ。」
ピエロ男「つまり、これまでのオレのやり方が正しいってわけだな。」
アケミ「何言ってんの。アンタは『はい』が少なすぎ!」